研究概要 |
1 チトクロムb_<561>の精製法の確立 ウシ副腎髄質からクロマフィン小胞を精製した後、アスコルビン酸(AsH^-)存在下で膜を1.0%β-オクチルグルコシドにより可溶化し、ω-aminooctyl Sepharose 4Bによる疎水性アフィニティークロマトグラフィーによりチトクロムb_<561>を高純度に精製した。 2 精製チトクロムb_<561>のヘム含量 ピリジンヘモクローム法により、精製チトクロムb_<561>標品のヘム含量を測定した結果、1分子あたり1.70個のヘムBが結合していることがわかった。 3 EPR法による精製チトクロムb_<561>活性部位の解析 ヘムの酸化還元に伴って変動する3つのlow-spin分子種(gz=3.70,gz=3.16,gz=2.84)を観測した。チトクロムb_<561>分子の2つの独立なヘム結合部位を示唆している。 4 弱アルカリ処理・DEP処理による選択的不活性化 精製チトクロムb_<561>を酸化状態で弱アルカリあるいはDEP(diethylpyrocarbonate)処理を行うと、2つのヘムの内の一方がAsH^-では還元できなくなることがわかった。 5 パルスラジオリシス法による電子伝達機構の解明 パルスラジオリシス法によるモノデヒドロアスコルビン酸ラジカル(MDA)と還元型チトクロムb_<561>との電子伝達反応の解析を行った。その結果、チトクロムb_<561>では、MDAによる酸化過程とAsH^-による還元過程はそれぞれ別のヘム鉄で起こっていることが明らかとなった。 6 チトクロムb_<561>膜貫通モデル 以上の研究成果をもとに、チトクロムb_<561>の6回膜貫通モデルを提唱した。2つのヘムはクロマフィン小胞膜の細胞質側と小胞内側という両端に位置し、2つの完全に保存されている配列はそれぞれ2つのヘムのすぐ近傍に位置することになり、それぞれ、細胞質側でのAsH^-結合部位、小胞内でのMDA結合部位を形成していると考えられる。
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