研究概要 |
IRS-1(Insulin Receptor Substrate-1)はインスリン受容体の主要な基質であり,多様なインスリン作用を伝達している。今回,IRS-1遺伝子の発現が分子レベルでどのように調節されているかを以下に示すように解析した。 (1)Notthern blot法にて数種の細胞におけるIRS-1 mRNA量を解析し,一番発現の高いHepG2細胞と低いCHO細胞を用いて更にIRS-1遺伝子発現の違いを検討した。 (2)IRS-1遺伝子プロモーター5'端の様々なdeletionをCAT(chloramphenicol acetyltransferase)遺伝子の上流に組み込み,CHO,HepG2両細胞にてCATアッセイを行い,-1645〜-1605bpの領域(フラグメントA)はHepG2細胞にて転写を正に,-1605〜-1585bpの領域(フラグメントB)はCHO細胞にて転写を負に調節することを見い出した。 (3)HepG2,CHO細胞より核蛋白を抽出,ゲルシフトアッセイを施行,フラグメントAのEboxに結合する両細胞に共通の核蛋白を1つ,HepG2細胞特異的核蛋白を1つ同定した。フラグメントBでは,各細胞においてC/EBP結合部位に結合する2つの核蛋白を同定した。 (4)さらに,Ebox,C/EBP結合部位各々に変異を導入,転写因子が結合できない変異IRS-1プロモーターを用いてCATアッセイを施行した結果,Eboxの変異によりHepG2細胞における転写活性の増強が消失すること,C/EBP結合部位の変異によりCHO細胞における転写活性の低下が消失することが確認された。 以上,本研究ではIRS-1遺伝子プロモーターのEboxとこれに結合する核蛋白がHepG2細胞において転写活性を増強させること,C/EBP結合部位とこれに結合するC/EBPがCHO細胞において転写活性を低下させることを明らかにした。
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