発光基質を必要としないクラゲ由来の緑色蛍光蛋白質(GFP)による動物細胞の蛍光ラベル法の改善を目的として、1、温度抵抗性のGFPの開発、2、励起・発光波長の異なるGFP変異体の作出、3、生細胞における蛋白質動態のリアルタイム観察、について検討を重ねた。 1、GFPmRNA中の使用コドンや翻訳開始シグナルの最適化を図ると共に、様々なアミノ酸置換を導入して、動物培養細胞での蛍光強度について検討した。その結果、発色団中の65番目のセリンをアラニンに置換することで、励起波長のシフトに伴って温度感受性が消滅することを見いだした。この変異に加えて、さらに145番目のチロシンをフェニルアラニンに置換することでGFPの細胞内安定性が増し、細胞あたりの蛍光強度は著しく改善される。 2、励起波長のシフトに加えて、発光の波長シフトに依存した青色発光の変異GFPを作成した。細胞内で青色蛍光を確認することができたが、緑色のAFPに比べ、強度の点でなお問題が残されている。これは発色団の変異と他の部位での変異の間に未知の相関があるためと考えられ、発表されたGFP立体構造に基づいてさらに検討する予定である。 3、細胞内でのGFP産生には、従来使用してきたサイトメガロウィルスプロモーターに加えて、グルココルチコイドホルモンに応答するマウス乳癌ウィルスプロモーターを導入し、GFP蛍光発光を指標とした単一細胞でのホルモン応答アッセイ系を構築した。また、動物胚に対しても、リポフェクション、電気穿孔法を用いてGFP発現ベクターの導入に成功し、ニワトリ、ゼプラフィッシュ、ツメガエルでの蛍光発光を確認した。ことにニワトリ胚に対しては、部位特異的な遺伝子導入法の確立に向けて新たなパラメーターを設定しつつある。
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