研究概要 |
我々がラット肝から同定し、cDNAクローンを得た7H6抗原(以下Barmotin)を中心とし、さらにラットOccludinの全長cDNAを得、これらタイト結合蛋白質を用いてタイト結合の分子構造とその病態での意義を、(1)Two hybrid systemを用いた結合蛋白質の探索、(2)ヒト大腸癌におけるタイト結合分子の発現を検討することによって追及した. (1)タイト結合分子barmotin,Occludin,ZO-1各機能ドメインを一次構造より解析し各ドメインを酵母発現ベクターにGAL4 bindingドメインとフュージョン蛋白質として発現させ、肝・腎・前立腺ライブラリーをスクリーニングした.この結果、16種類のクローンが単離され、シークエンスの結果数種類の新規遺伝子産物が見いだされた.現在、各クローンのコードする蛋白質に対する抗体を作製し細胞内分布や分子の解析を行っている. (2)ヒト大腸癌におけるタイト結合蛋白質(Barmotin,Occludin,ZO-1)の発現、細胞内分布および癌悪性度の相関;大腸癌における細胞極性の異常は癌の生物学的悪性度に相関する.上皮細胞においてタイト結合は細胞膜上の分子の拡散を規定し細胞極性の維持に当たっている.そこでタイト結合蛋白質(Barmotin,Occludin,ZO-1)の発現様式と大腸癌の悪性度を病理形態学と生物学的に分類し検討した.高分化癌においては3つのタイト結合分子は正常腸上皮に類似の分布を示した.しかし上皮形態を失った低分化腺癌ではOccludinは完全に欠失し、Barmotinの著しい発現低下を観察した.これらの実験より大腸癌においてタイト結合分子の発現と細胞内分布の異常は癌の悪性化にともなって起こること、および個々のタイト結合分子は癌悪性化の過程において異なった制御を受けることが明らかとなった.(Me.Electron.Microscop.,31,in press)
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