研究概要 |
酵母two-hybrid系を利用してJAK2のキナーゼドメインと直接結合しうる分子をスクリーニングした。その結果新規遺伝子JAB(JAK-binding protcin)をクローニングした。JABは構造的にCIS(cytokine-inducible SH2 protein)に類似した分子であり、293T細胞を用いた実現ではJAK1,2,3およびTyk2どのJAK分子とも会合した。two-hybrid系ではCISはJAK2とは結合しなかった。またキナーゼドメインに変異を導入してキナーゼ活性をなくしたJAK2とは結合しなかったのでJABはSH2ドメインとJAK2の自己りん酸化部位を介して結合しているものと考えられた。次に293細胞においてJAK2を過剰発現させるとJAK2の自己りん酸化や基質であるSTATのりん酸化を検出できる。このときJABを共発現させるとJAK2の自己りん酸化やSTATのりん酸化が強力に抑えられることがわかった。ルシフェラーゼアッセイにおいてJABはSTAT3,STAT5の活性化を抑制した。またJABを安定に高発現させた繊維芽細胞はインターフェロンによる細胞増殖抑制効果にたいして耐性を示した。したがってJABはひろくJAK-STAT経路の負の調節因子と考えることができる。さらにデータベースの検索によってESTとして登録されているcDNAのなかにCIS,JABと構造的に類似する遺伝子が少なくとも3つ存在することが明かとなった(CIS2,3,4)。SH2ドメインは25-35%程度のアミノ酸が同一であり、他のSH2ドメインとは明かに異なったグループをつくる。さらにこのファミリーではC末端約40アミノ酸(CIS-homology motif ; CH motif)がよく保存されており機能的に重要と考えられる。このなかには保存されたチロシン残基が存在し、この領域がキナーゼのpseudesubstrateとして作用してキナーゼ活性を抑制するというモデルを考えている。
|