研究概要 |
1.担子菌ヒトヨタケの有性過程とそれに伴う性形態形成は、交配型遺伝子AとBによる支配を受けている。本研究では、交配することなくA制御下の性形態形成(pseudoclamp connection)を行うようになった変異(pccl-1)について解析した。pccl遺伝子およびcDNAのクローニング・塩基配列決定によって、1つのイントロンによって中断される1683bpのORFが同定された。PcclタンパクはSRY型のHMGボックスをもつ転写因子であった。またノーザン分析により,pcclの転写量は交配型遺伝子AまたはBのスイッチ・オンによって増大されることが明らかとなった。さらに,pccl-1対立遺伝子は,HMGボックスとC末端の間に位置する211番目のserine残基がnonsense変異をもっていることが判明した。 2.ヒトヨタケのAmutBmut株から,REMI法により,クランプ結合の形成に関する2種の突然変異体を新たに誘発・分離した。その一つは,クランプ結合の形成能を失ったものであり,もう一つは,異常な形態のクランプを形成するものである。 3.ヒトヨタケのcommon-AB diploid株を構築し,これを和合するhaploid株と交配してdiploid核とhaploid核とからなる二核菌糸を構築した。この二核菌糸の先端および次端細胞におけるdiploid核およびhaploid核の位置関係を蛍光顕微鏡法および顕微蛍光計測法により調査した結果,2つの核は,二核菌糸の先端細胞において先導核の位置と第二核の位置を共役分裂ごとに交代していることが判明した。
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