| 研究概要 |
CDK5は成熟ニューロンで発現しているサイクリン依存性キナーゼの1つである。CDK5はin vitroの系において,ニューロフィラメントやタウ蛋白質などをリン酸化することが知られている。CDK5は免疫組織化学的にニューロンの軸索でのみ検出されたという報告がある。我々はCDK5に対する2種の抗体を用い免疫組織化学的研究を行った。その結果,今までの報告とは異なりCDK5に対する陽性反応は中枢神経系および抹消神経系のニューロンの軸索のみならず,核小体を除く核の部分にも検出された。ニューロンの核に存在するCDK5はニューロフィラメントあるいはタウ蛋白質キナーゼとは異なる生理的機能をもつのではないかと思われる。
PCNAはDNAポリメラーゼのの活性化因子としての性質をもち,DNAの複製と修復に必須である。そのため,PCNAは増殖性細胞において多量に発現している。しかし,ノーザンブロットによると増殖性細胞の少ないマウス脳においてもPCNAKのmRNAは検出された。2種の抗PCNA抗体(PC10および19F4)をウェスタンブロットに用いて調べると,脳ではPC10でのみバンドが検出された。さらに免疫組織化学によって調べると,PC10陽性反応は広い範囲にわたってニューロンおよびグリアの核に認められた。細胞の増殖が起こっているsubventricular zone(SVZ)ではPC10および19F4の両者の反応が検出された。SVZ以外でのPC10陽性反応はPCNAに類似した蛋白質によると考えられるが,PCNAがリン酸化等の修飾を受けたものである可能性もある。
|
