伝達物質放出に直接関与すると考えられる蛋白質複合体成分間の相互作用、ならびに複合体構成成分のうち私達が最初に報告したシナ-フィンの機能を追究するため、複合体成分間の相互作用の解析、ラット脳における二つのisoformシナ-フィン1、2のmRNAの発現部位の同定等の実験を行い、以下のような結果を得た。 (1)ラット脳膜分画のTriton X-100抽出物をグリセロール密度勾配遠心にかけ、蛋白質複合体成分に対する抗体による免疫沈降後、イムノブロットによって沈降物を同定した。その結果、シナプトダクミン、シンタキシン、SNAP-25、VAMP、シナ-フィンはほとんどが7Sの粒子として存在すること、このほかにVAMPおよびシナ-フィンを含まない複合体が存在することなどが明らかになった。この様な複合体の不均一性は複合体の形成、解消過程にいくつかの中間段階があることを示唆しており、その動態がいかにして制御されるかが今後解明すべき重要な課題である。 (2)組み換シナ-フィンは内在性のシナ-フィンを置換してシンタキシン等を含む7S粒子を形成できる。この複合体の性質を検討中である。 (2)シナ-フィン1、2に対するmRNAは脳にほとんど限られており、精巣等にわずかに発現している。また、両者の脳内分布は小脳、視床、嗅球、大脳皮質等において有意に異なる。したがって両蛋白質は異なった生理的意味を有するものと予想される。 現在、isoformのそれぞれに特異的な単クローン抗体を用いて免疫組織化学により両isoformの分布を調べている。
|