研究概要 |
新たに神経細胞においてもサイトカイン刺激や微小管作用系抗がん剤により誘導型NOSが発現誘導されることを発見した(Ogura,T.,et al.,NeuroReport,1996)。神経細胞での誘導型NOS発現誘導は、グリア細胞でのIFN-γおよびIL-lβによる誘導型NOS発現誘導の協調作用とは異なり、IFN-γおよびTNF-αによる協調作用により誘導型NOS発現を誘導した。このように、神経系における誘導型NOS発現制御機構には細胞特異的制御機構が存在することを見いだした。誘導型NOSによるNO生成は転写レベルで主に制御されている。誘導型NOS発現制御機構は、マウスマクロファージの系で詳細に解析されている。その発現誘導機構は、転写因子IRF-lやNF-kBの活性化による。しかしながら、神経細胞での誘導型NOS発現制御は、IRF-lを介する発現制御機構とは異なりTNFレセプターIIを介する新たなシグナル伝達系が関与することを明らかにした(論文投稿準備中)。さらに、末梢神経障害を引き起こす微小管作用系抗がん剤により神経培養細胞またはラット後根神経節で誘導型NOS発現誘導が認められ、ラットモデルでの誘導型NOS発現誘導抑制により神経障害が増悪することを見いだした(論文投稿準備中)。一方、NOは、抗がん剤による神経細胞のアポトーシスを抑制することも明らかにした(論文投稿準備中)。本研究では、神経細胞特異的な誘導型NOS発現制御機構により生成されるNOが、神経細胞死に対して保護的に働く可能性を提唱した。
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