哺乳類においては視床下部の視交叉上核(SCN)に存在する神経細胞集団がリズムジェネレーターとして機能することが電気生理学的に明らかにされている。概日性時計の構成因子(群)を分子レベルで明らかにするために、ショウジョウバエのper遺伝子の高等生物における相同遺伝子の分離を試みた。リズム形成に必須であるPERのPASドメインに着目し、IMS(intra module scanning)PCR法を用いることで、新たなヒト遺伝子hDIALを単離した。節足動物以外では初めて(勿論哺乳類でも初めて)生物時計を支配すると考えられる遺伝子を見い出した。hDIALは、PASドメインを含む三つの領域でPERと強い相同性を示す1290残基のポリペプチドをコードし、ヒト染色体17p13.1上にマップされた。また、hDIALのゲノム塩基配列を決定した結果、22個のエクソンから構成されることが判明した。成人では約4.6kbの転写産物が小脳、海馬、視床、SCNで発現していた。この遺伝子はマウスでも染色体11B上に保存されており(mDial)、支配される1291残基のポリペプチドはhDIALとアミノ酸レベルで95%の相同性を示した。さらに、mDial mRNA量は明暗及び恒暗条件下、マウス全脳及びSCN内で日周変動を示し、この遺伝子が哺乳類の概日リズム形成に機能することが強く示唆された。次に、DIALにはPERと構造上相同な3つのドメインが存在することから、これらは機能においても保存されていることが推察できる。そこで、3つのドメインと相互作用する分子をTwo hybrid法で検索した結果、TIMの哺乳類ホモログと考えられるDNA断片を得た。現在この遺伝子の構造の解析も進めている。
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