研究概要 |
中枢ヒスタミン(HA)ニューロンは,視床下部結節乳頭核に細胞体を持ち全脳に投射している.前年度は,HAニューロンが交感神経前運動核である延髄吻側腹外側部(RVL)に投射し,頚部交感神経を介して気管張力を調節している事を解明した.今年度は,呼吸パターンに注目しヒスタミンの作用を生理学的神経化学的に検討した.実験には,ウレタンクロラロース麻酔したウサギを用い非動化,人工換気下で横隔神経活動を記録した.第四脳室へのHA投与の影響,体温上昇によっておこる呼吸パターンの変化に対する体温調節中枢へのHAリセプター拮抗薬の効果を調べた.又RVL孤束核付近の細胞外液中のHA遊離量をマイクロダイアリシス法によって高速液体クロマトフラフィーを用いて分析定量した.体温上昇に伴って呼吸数増加が認められるが,これは視索前野/前視床下部(POA/AH)へのpyrilamine 1μmol投与によって抑制された.しかしcimetidine投与によっては,影響されなかった.これは体温上昇による呼吸数増加が,POA/AHにおいてHA H_1 receptorによって修飾されていることを示している.一方,第四脳室に投与した(i.c.v.)HA 50 nmolは,呼吸数に影響を与えなかったが,H_1 antagonist pyrilamine 1μmoli.c.v.により増強され,H2 antagonist, cimetidine 0.4μmoli.c.v.により減少した.延髄レベルでは,呼吸数に対しH_1 receptorを介した抑制作用とH_2 receptorを介した興奮作用があることを示している.また体温上昇群での延髄RVL,孤束核におけるHA遊離は,正常体温群に対して有意に上昇した.延髄呼吸関連核においてHA遊離が上昇することから中枢HAニューロンは体温上昇時に活動を高め視床下部,延髄レベルで作用し,呼吸変化をおこしていることが示唆された.
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