研究概要 |
実験動物の心・血管系に及ぼす環境温度の影響を明らかにすることを目的とし,テレメトリー自動計測システムを用い,高温(33℃)及び低温(15℃)環境下におけるラットの血圧・心拍数・体温を測定した。さらに、各々の環境下におけるラットの血漿心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)濃度をラジオイムノアッセイ(RIA)にて測定し,心房筋細胞内のANP分泌顆粒を免疫組織化学的並びに電子顕微鏡学的に検索した。 【結果及び考察】(1)血圧・心拍数・体温:高温暴露群では心拍数に変化は見られなかったが,血圧・体温は時間経過と共に徐々に上昇する傾向にあった。その後,通常環境下に戻すと2〜3時間後に正常値になった。低温暴露群では血圧・体温共に変化は見られなかったが,心拍数は暴露後正常値に比べ有意に上昇し、通常環境下に戻すと1時間後に正常値になった。(2)血漿ANP濃度:高温暴露後何れも対照群に比べ有意に高値であった。高温暴露から通常環境下に戻し1時間後の血漿ANP濃度は対照群と比べ有意に高かったが、3時間後には正常値になった。低温暴露後は,暴露1時間後のみ対照群に比べ有意に高値であったが、その後対照群と比べ有意な変化は認められなかった。(3)免疫組織科学的及び電顕所員:高温暴露後,心房筋細胞は対照群に比べANP抗体に強く反応し、24時間後が最も強く反応した。高温暴露から通常環境下に戻し1時間後の心房筋細胞はANP抗体に強く反応したが,その後対照群と比べ差は認められなかった。低温暴露群の心房筋細胞は,暴露1時間後のみ対照群に比べANP抗体に強く反応したが,その後差異は認められなかった。電顕的に各群の心房筋細胞内のANP顆粒数は,免疫組織化学的に反応が強いものは多く、弱いものは少なく,免疫組織化学的な結果と一致していた。以上の結果より,高温環境はANP合成・分泌機序に顕著な影響を与えることが示唆された。
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