研究課題/領域番号 |
08710009
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
中国哲学
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
山田 俊 熊本県立大学, 文学部, 助教授 (30240021)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1996年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 經 / 論 / 『三論元旨』 / 『上清三眞旨要玉訣』 / 『太上大道玉清経』 |
研究概要 |
従来の申請者の研究により、唐と宋の道教思想には、その思想上の継承・発展の側面と、思想的異質さの側面とが有ることが判明した。本研究は、この問題の萌芽を宋以前の唐代の「經」と「論」との関係に探ろうとするものである。 本年度の研究としては以下の成果を見る事が出来た。 先ず、昨年度から引き続き、8世紀頃の成立とされる『三論元旨』の思想を「論」として研究することで、『三論元旨』が自己の思想の展開に有利とされる様々な道典を「經」として引用し、そこから独自の得道論を構築していたことを確認した。それは、「空」の思想であると同時に、身心双修の思想でもあり、そこに引かれている個々の「經」では総括的には説かれてはいないものであった。この様な「論」に於ける「經」の援用の仕方としては、例えば「道教義樞』に於ける「三洞」と「三乘」の観念などにも窺うことが出来るものであり、これらの研究成果は、論文「『三論元旨』の思想」、及び博士号学位請求論文の一部として発表された。 又、従来その成立が六朝・梁代とされていた『上清三眞旨要玉訣』の性格をそこに引用されている主として上清派の道典の性格から検討し直し、且つ、そこに引かれている『太上大道玉清經』に焦点を当てて、仏道論争史上における本経の位置付けと、その独特の思想について検討を加えることが出来た。その成果は、論文「『太上大道玉清經』の成立について」、「『太上大道玉清經』の思想について」に発表した。 これらの「論」に於ける思想は、既存の「經」の思想を素材に自由に思想を構築していくという8世紀頃から北宋にかての道教思想の大きな流れの一つとして考えることが可能と思われる。この傾向が唐末五代〜北宋に於いて大部な『老子』「荘子』の注釈書を数多く生み、又、「宗教」から「思想」へと道教思想が広がりを見せていく背景に有ったと思われるが、その全体的な検討については、今後の研究で徐々に明確にしていきたい。
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