研究課題/領域番号 |
08710022
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
美学(含芸術諸学)
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
阿部 成樹 山形大学, 人文学部, 助教授 (90270800)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1996年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 18世紀 / フランス / 美学 / 絵画 / 彫刻 / 感性論 / ワト- / ウ-ドン |
研究概要 |
今回の研究では、フランス18世紀美術の基本性格について、特に同時代の感性にまつわる理論や思想との関連を中心に考察を試みた。その際、具体的には1)重要と思われる画家・彫刻家の作品分析と、2)同時代の感性論の分析の二つの柱を立てて研究を進めた。まず1)に関しては、ワト-、ウ-ドンという二人の重要な藝術家の全作品カタログをはじめ、貴重な資料を収集した結果、次のような知見が得られた。まず、藝術家による感性論や美学への接近が、ウ-ドンの場合に見るようにかなり直接的であること。ピュグマリオン神話や哲学者の肖像といったアナロジックな関わりにとどまらず、ウ-ドンの場合、「哲学」そのものの擬人像といった作品を制作しており、現在ほとんど研究の対象となることのないこのような作品を詳しく分析することにより、美術と感性論との直接的関係が明らかになると思われる。また、ある研究に示唆された結果、当初重視していた主題的関連だけでなく、ワト-に見るように画風そのものの感性論的意味を問うことも可能であると考えるようになった。 感性論的ディスクールに関しては、現在フランスで逐次刊行中の、フランス語による哲学書の大がかりな再販叢書から重要と思われる著作を選択し、一括して入手した。このセットの分析と、これまでのフランス、日本における18世紀思想・美学研究の参照により、更にこの時代の美術の主題における感性論との関わりが多面的に見え始めた。一つの例として、読書行為が挙げられる。当時の文脈において読書は強い感情的反応をもたらすものとして捉えられたり、教育という通路を通じて、子どもの感性の形成と結びつけられたりするものであることが1次、2次文献から知られた。この知見により、当時の画題に散見される「読書(する人)」は新たな意味を持つことになる。 以上のような知見を基礎に、今後更に分析・研究を進めて行くつもりである。
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