研究概要 |
貴重なアンティーク・オルゴールを多数,所蔵している那須オルゴール美術館の全面的な協力をえて,代表的なアンティーク・オルゴール音の超広帯域デジタル録音をおこなった.録音した音資料について,高速フーリエ解析(FFT)をおこなって周波数パワースペクトルを検討した.その結果,人間の可聴域上限(20kHz)を大幅にうわまわり100kHzにおよぶ豊富な高周波成分が含まれていることを見いだした.オルゴールの構造,材質などによって,その周波数パワースペクトル分布にちがいがあることも明らかになった.また,それらの高周波成分は非定常性のたかいゆらぎ構造を有している可能性があることが見いだされた. つぎに,代表的な古楽器のひとつであるチェンバロと,リュート属の7種類の楽器(ルネサンス・リュート,テオルボ,キタロ-ネ,ルネサンス・ギタ-,バロック・ギタ-,オルファリオン,ビヒュエラ)の超広帯域高精度録音物を入手し,その物理構造を高速フーリエ解析によって分析した.その結果,チェンバロには70kHzを上回る高周波成分が含まれていることが見いだされた.これは,ピアノ音の周波数が10kHzをこえることが希であることと比べると,顕著な違いといえる.リュート属の楽器にはいずれも40kHzをこえる高周波成分が含まれていることがわかった.なかでも,反響音が豊かなバロック・ギタ-,金属弦を用いたオルファリオンに豊富な高周波成分が含まれていることが見いだされた.
|