研究概要 |
本研究では、定位反応の指標として、自律系成分である皮膚電気反応と視覚系成分である刺激への定位の持続時間(凝視時間)とを取得すると共に、処理資源配分の指標であるプローブに対する反応時間も同時に測定し、定位反応と処理資源配分との関係を探ろうとした。本研究では、以下の手順で目的を達成しようとした. これまでの研究では、生体にとって意味づけのなされている有意な刺激に対しては“選択的定位反応"が、また、有意刺激と異なるモダリティで提示される非有意刺激に対しては“警戒的定位反応"が出現すること、さらに、定位反応は処理資源配分と関連して誘発されることが示唆されている(今井,1992;Siddle,1991)。このことから、警戒的定位反応が出現する際の非有意刺激に対しては,より多くの処理資源が配分されていると予測される.そこで本研究では、プローブと共に提示される視覚刺激を有意刺激、共に提示されない刺激を非有意刺激とし、定位反応と処理資源配分との関係を刺激情報価の観点から検討した.刺激情報価は、S1-S2強化スケジュールによって操作し3群(0%,100%,および50%強化群)を構成した。その結果.凝視時間は刺激の反復提示に伴う慣れを示し、刺激情報価が最大であった50%強化群でもっとも持続時間は長かったが、統計的な確証は得られなかった.また皮膚電気反応も、プローブと共に提示された刺激およびプローブに対して増大していたが、同様に統計的有意差は認められなかった.また、プローブに対する反応時間は、プローブが刺激と共に提示されると、刺激の反復提示初期ではより遅く後期ではより速化した.一方、プローブが刺激間間隔中に提示されると、反復提示に伴う反応時間の減少はより緩やかであった.この結果は、刺激の反復提示初期にはより多くの処理資源が配分されるが、後期には配分量が少なくなるという仮説(Siddle,1991)を支持するものと解釈された.
|