研究概要 |
ある集団の実体性を保証するような背景情報(集団の歴史や特徴に関する情報)と,その集団に所属する成員の,ある特性や特徴の次元(向性や人種など)での多様性(変動性)の知覚が,どのように認知処理されて,その集団に対するステレオタイプや偏見が維持されたり,変化したりするのかを明らかにするための研究の足がかりとなる実験を2つ行なった.実験1では,237名の被験者は,ある集団に関する背景情報を呈示された後に,その集団の成員6名文分の記述情報を逐次呈示された.その成員情報は,内向性-外向性の次元で変動性の大小が操作されていた。変動性の大きい条件で,それが小さい条件でよりも,背景情報に関する再認成績が阻害されるという有意な結果を得た.実験2は,実験1の追試であったが,次の2点で異なっていた.(1)102名の被験者は,成員情報を先に,背景情報を後に呈示された.(2)成員情報の抽象化認知処理を促す教示と,情報の具現化認知処理を促す教示がなされる条件がそれぞれ加えられた.抽象化を促進された条件では,変動性が小さいときに,それが大きいときよりも,背景情報に関する再認成績が阻害されるという有意な結果を得た.実験1と実験2から,集団に関する背景情報と成員情報(の変動性)が相互に影響しあっていることが示唆されたが,その相互影響の仕方についての2つの実験結果の非整合性の問題が今後の課題として残された.
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