研究概要 |
<目的> 本研究では,高齢者のより良い適応の条件を検討するために「原因帰属」に着目し,その個人差の測定についての予備的な検討を行った.わが国においては標準化されている帰属スタイル測定尺度が少なく,しかも高齢者を対象にした研究は現状ではほとんどない.そこで本研究では,従来行われきた大学生のデータと比較検討することにより,帰属スタイルを測定する尺度の高齢者等への適用可能性を模索する.さらに帰属スタイル測定尺度が個人の心理的適応に与える影響を,精神的健康尺度との相関により検討する. <方法> 高齢者群は,福祉会館利用者および高齢者教室の参加者を,青年群は大学生を対象として調査を行った.高齢者に対しては基本的に質問紙に従った構造化面接を行ったが,一部集団式の調査も行った.一般の大学生に対しては集団式の調査を行った.使用した尺度は,拡張版帰属スタイル測定尺度(Expanded Attributional Style Questionnaire),絶望感尺度,抑鬱性尺度などであった.なお,これらの尺度は他のテストバッテリ-の一部に組み込まれていた. <結果・考察> 大学生のデータを基に,信頼性の指標であるα係数をEASQの各次元ごとに検討した.その結果,一部の次元(内在性の次元)を除き,尺度としての使用可能性は十分に認められた.またその短縮版もほぼ同様の結果を示し,信頼性はある程度確認された.同時に妥当性に関しては,やはり一部の次元(内在性の次元)で問題が見られたものの,絶望感尺度などとの相関分析により確認された. 高齢者に関しては収集された面接データから,EASQの語句表現などを始めいくつかの問題点が表面化した.その結果,全く同じ項目内容で大学生など他の集団のデータと比較することの疑義が生じた.つまり項目作成の段階から再度検討し直す可能性が見いだされた.高齢者における尺度のそのものの信頼性,妥当性に関しては,項目作成から始め,大学生のデータと比較可能な等価な尺度を作成することの必要性が示唆された. 現在さらに他の変数との関係などを検討しており,項目作成を含め,研究は継続中である.
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