テレビゲーム使用が子供の社会的発達に悪影響を及ぼすとする議論はかつてから盛んであるが、その実証的な証拠は少ない。そこで、本研究では、小学生を対象としてパネル研究を行い、そのデータを縦断的パス解析によって分析することを通して、テレビゲーム使用が、子供の攻撃性、性役割観、刺激欲求に影響しているかどうかを検討した。260名の児童(4年生90名、5年生78名、6年生92名)に対して、2回の調査が4ヶ月の期間を置いて行われ、それぞれにおいて、被調査者のテレビゲーム使用量、攻撃性、性役割観、刺激欲求が測定された(攻撃性、性役割観、刺激欲求の測定にあたっては既存の尺度を利用した)。テレビゲーム使用量は、全対の使用量とともに、7つのテレビゲームの種類(アクション、シミュレーション、アドベンチャー、ロールプレイング、スポーツ、パスル、ボード)のそれぞれについて測定された。こうしたデータに対して、男女をこみにして分析した場合(ただし、性別、年齢の効果は統制した)、アクションゲームとスポーツゲームの使用が攻撃性を低めているという結果が得られた。しかし、性役割観、刺激欲求には影響はなかった。男子については、テレビゲームの影響を示す結果は全く得られなかった。一方、女子については、スポーツゲームが攻撃性を低めているという結果と、アクションゲーム、アドベンチャーゲーム、ボードゲームが刺激欲求を高めているという結果が得られた。しかし、性役割観に関する影響は見られなかった。このように、テレビゲーム使用の悪影響論を肯定しうる結果と否定する結果との両方が得られた。
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