研究概要 |
研究代表者の専門は心理教育測定学であり,研究業績にも示したとおりこれまで多変量解析の理論的かつ応用的研究を行ってきた.一般的に,心理学や教育学の分野でのデータには多くの誤差が混入しており,多変量解折の分析結果が思わしくないことも多い.そこで近年注目されているニューラルネットワークを非線形多変量解析の1つの手法として導入した.本研究では,教育心理学分野でなじみの深い応用例の紹介を通じて,実用的な意味での非線形多変量解析法(Nonlinear multivariate analysis)の可能性とその有効性を確認した. 教育心理学の研究分野では,判別分析,主成分分析,回帰分折等,多変量解折と呼ばれる統計手法がしばしば使用される.しかし多変量解析は主として線形な関数によってデータの全体的傾向を表現し,情報の判別や縮約的記述や予測を行っている.しかし線形関数を使用することは,判別や記述や予測の目的にとって必要不可欠な前提というわけではなく,むしろ制約である.データの全体的な傾向を表現するためには,非線形な関数を利用したほうが効果的な分析が可能になる場合もある.そこで多変量解析を非線形モデルに拡張する際の自然な,しかも強力な発展モデルとして,本研究ではニューラルネットワークを用いることによって,従来の多変量解析の線形制約による限界をしばしば克服できる場合があることを実証した.
|