心拍に関する研究では、健常者を対象に主課題に捕捉トラッキングを、副課題にストループ課題を用いた二重課題を作成し、その難易度に対する主観的評定であるTLX得点と情緒的状態評価スケール、反応時間、事象関連電位P300振幅値と心拍変動性指標の感度の相違を作業時間の要因を含めて検討した。結果、心拍変動性指標(呼吸数に同期したRSA成分)では、難易度の直線的増大に対しU字型の変化を示す感度特性が示唆され、情緒的状態評価尺度と同様に精神的疲労様状態を反映し時間経過とともに変化が増強されるのに対し、TLXとP300はむしろ難易度に応じた変化でかつ時間経過の影響が少ないことが示唆された。この点から、心拍変動性指標は課題操作の物理的側面よりも、間接的な情緒的変化の把握に向いていることが確認された(Shinoda et.al.1996)。次に、被験者群として、当初予定していた、学習障害児群の確保が困難であったことから、同様な注意の困難さを有する精神遅滞者群と健常者群を用いて、捕捉トラッキング課題のみのシングル課題下で、事象関連電位と反応精度について検討を行った。なお実験装置の制約上心拍の測定を含めることはできなかった。捕捉トラッキング課題の難易度を変えて、協調運動能力と脳内運動準備過程について検討を行った結果、精神遅滞者群では健常者群に比べ、課題開始に関わる準備電位の立ち上がりが遅れ、反応後の陽性成分も安定しないことから、早期の準備性、反応出力とも不安定なことが示唆された。個々の例では、前者が比較的良好であり、協調運動能力の訓練によっては、準備性あるいは一過性の注意能力の改善が期待される可能性のある者もいた。このような検討を通して、注意の困難さに関わるサブタイプみるさい、Inattentive typeではERP各成分が、Compulsive typeでは心拍変動性指標が有効な指標となりうるのではないかと考えられた。
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