研究課題/領域番号 |
08710131
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
社会学(含社会福祉関係)
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
田中 紀行 奈良女子大学, 文学部, 助教授 (20212037)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1996年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 歴史社会学 / 知識社会学 / アカデミック・カルチャー / 大学知識人 |
研究概要 |
本研究の目的は、近代日本の大学知識人の文化(アカデミック・カルチャー)の特質を比較歴史社会学的に明らかにすることであったが、今年度に行った研究では、比較研究の理論的枠組を検討し、日本のアカデミック・カルチャーの社会構造的および制度的な前提条件を分析する段階で実質的に終わらざるをえなかった。本研究によって得られた主な知見は次のとおりである。 1.大学人の共同体(アカデミック・コミュニティ)のなかでの各学門分野の(また研究者の)威信(ないし正統性)のあいだには、通例、相互に還元できない複数のヒエラルヒ-があり、このヒエラルヒ-間の序列は、大学知識人の「場」(ブルデュー)の外部からの自律性の強さを反映する。 2.近代日本の場合、国家の主導によって形成された帝国大学を頂点とする高等教育システムを通じて正統的知識が生産・伝達されていったうえ、大学知識人(および大学出身者)の下位文化が近代以前の伝統的階層文化から断絶していたために、もともと大学知識人の「場」の国家からの自律性は相対的に低かった。 3.日本におけるアカデミック・カルチャーの形成において、大学における学部編成のパターンは重要な制度的条件をなしている。この点で、戦時期に急激に進んだ国立大学における理科系学部の重点的拡充が与えた影響は決定的であり、戦後もこの傾向は基本的に持続している。 現代日本において大学人の「場」は国家や産業界に対して相対的に低い自律性しか備えておらず、アカデミック・カルチャーに占める「教養知」の要素の比重も低いと思われるが、このことは相互に関連しており、その歴史的前提はすでに戦時期までに準備されていたのではないかというのが私の仮説である。今後はこれを検証すべく、今年度中の実施できなかった研究計画を継続していきたいと考えている。
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