近年、社会的影響を及ぼしているインターネットによる情報化が地域に対して持つ意味は2つある。インターネットは1極集中的国土構造を変え、地方からの情報発信の基盤と位置づけられる。一方で、インターネットは個々人にとってパーソナルな自己表現を可能にする地域を超えた情報空間となっている。このような情報化の2面性をふまえて、現代の生活者にとって地域がもちうる意味を考えることが本研究の課題であった。今回は、大分県を事例に考察を進めた。各機関、団体に対して、聞き取り調査と印刷資料の収集をおこない、これをインターネット上の各ホームページの掲載データで補足した。 調査からは以下の知見が得られた。大分県では、公共セクターは国の整備事業に連関しつつ、県内一律料金の情報ネットワークなどの基盤整備をすすめ、それをソフトウエア面での研究開発や産業立地に結びつける点が特徴的である。しかし、その利用促進という点では利用コストやサービス内容の点で十分ではなく、むしろ情報化による弱者切り捨ての問題が指摘されていた。また、地域ネットのインターネットへの対応は、単なる「プロバイダ」業務の拡張ではなく、BBSの特徴である双方向コミュニケーションをインターネット上で行うことを目指したものである。ここでは、コミュニケーションの基盤としての「地域」のあり方が問われている。 以上から、生活者に開かれた地域社会を目指すには、ハードウェア的基盤整備や、その利用促進の補助という公的な施策に加えて、ソフトウェア的な部分でも単なる閉じられたマーケット的なサービス提供としての質の向上を目指すのではなく、そこでのコミュニケーションを通して、自己の「生活」のなかでの他人の存在を意識し、そこからネットワーク空間と現実の生活社会を結びつけ、地域を再定位させる努力が必要なのである。
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