本研究では、次の2つの調査を通して日本人と在日・韓国朝鮮人との民族関係の現状を分析した。それぞれの調査から得られた知見の一部は、以下の通りである。 (1)在日・韓国朝鮮人の職業移動に関する生活史の聞き取り調査 (1)戦前・戦中に渡来した一世(対象者の親世代)は二重労働市場の下部に組み込まれ、不安定就労を続けた。 (2)親の不安定就労と職種の限定性に伴う貧困な出身家庭においても男子(本人または調査対象者の兄弟)は相対的に長い教育を受けてきた。 (3)出身家庭における家父長制の存在、またそこでの女性(無償)労働と家族内扶助は貧困な家庭を支えると同時に資本の効率的蓄積に機能した。 (4)現在の在日家族においては家父長制的規範の相対的弱体化が見られる。 (5)現在の世代(対象者の子供世代)では職種は多様化している。 (6)他方で自営業の継承動機などからは民族的移動障壁の残存がうかがわれる。 (2)在日集住地域における日本人地域住民の民族関係意識に関するサンプリング調査 (1)「一般外国人」との「近所づきあい志向」「結婚志向」に関しては、教育年数が長いほど結合志向は高まるが、「在日」の場合、教育年数の効果は見られない。 (2)「在日」との結合志向に関しては、地域共同性の高い人ほど結合志向性が高く、在日は(一般外国人とは異なって)同じ地域社会メンバーと見なされている。(ただし、それは地域内での民族性が顕在化していない場合であること (3)民族間の結合一分離志向に最も強い効果を示すのは「イエ・ムラ」的集団規範への包摂度である。それゆえ、民族関係を考える場合、集団間関係に注目せねばならない。
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