研究概要 |
阪神・淡路大震災における震災ボランティアの活躍で、日本社会全体にボランティア気運が広がったが、震災時に必要とされるボランティアというのは物心両面で多大な負担を強いられるものである。盛り上がったボランティアへの関心の受け皿となるものではない。 ふつうに職業生活を送りながら、生活のごく一部提供することで成果とやりがいの得られる、いわゆる市民参加型の活動メニューの整備が決定的に遅れている。かかる問題意識にもとづき、軽負担型のボランティア活動に注目し、いかなる条件の下でボランティア活動への動機づけが高められるかを、実験的に検討した。 地球環境問題(セミナーを企画・主催する委員会活動)、国際人権保護活動(郵便物の宛名ラベル作成)、リサイクル(リサイクル用資源の回収と分類作業)、および地域老人福祉(近隣の独居老人の相談相手)の4つのボランティア活動に関して検討を加えた。求人票状の提示刺激を作成し、大学1年生各100人余の4クラスによって実験集団が構成された。口頭教示によって操作された実験要因は、インセンティブ(内的,外的)と継続性(連続性,一回性)であった。従属変数として測定したのは、4つのボランティア活動それぞれについての関心、社会的意義、関与(参加意欲)、参加可能性に関する評定であった。 その結果、インセンティブの主効果が確認され、ボランティアについて従来強調されてきた「自発性」「無給性」に関わる内的インセンティブよりも、物質的・心理的報酬による誘導を含む外的インセンティブによって、関心、社会的意義、参加意欲、参加可能性への評価の高まることが確認された。継続性の主効果と交互作用については一貫した傾向は見られなかった。
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