高度情報化社会である現在、高齢者を対象とするパソコンネットワークも開設され活況を呈している。そのような現状の中で、従来の情報化社会論の中で展開されてきた議論はオンラインでの社会関係がいかなる特徴を持つかに焦点が絞られ、オンラインでコミュニケーションを活発に行う者がオフラインでどのような社会関係をどの程度持っておりそれがオンラインでのコミュニケーションを行っていない者とどの程度異なっているのかは問われてこなかった。そこで本研究は、パソコンネットワークを媒介として成立している社会関係をもつ高齢者のオフラインでの社会関係の特徴を一般の高齢者の社会関係と比較検討することを目的とした。 調査は大手商用ネットワークであるNifty Serveが開設するメロウフォーラムの電子会議室にシグオペより許可を得て調査票を掲載し、回答を電子メールにて受け取る方法で1997年1月に実施し28名(男性:25名、女性:3名)より回答を得た。回答者の平均年齢は64.9±7.1歳であり、会員制の電子会議室に頻繁にアクセスした者(9.3±5.4回/週)で、学歴がかなり高い者(旧制高校卒、新制大学卒を合わせて50%)という特徴を持つ。オフラインでのネットワークの規模を、頻繁に交流のある他者の数を用いて、東京都の代表サンプル(「中高年の生活と意識に関する都民調査」1992年東京都老人総合研究所)と比較しつつみると、別居子、兄弟・親戚、近隣についてはほぼ同じ程度であったものの、友人に関しては本調査では5.8±7.0人と東京都4.9±8.5人よりも大きな規模を示していた。これらの結果は、オンラインでのコミュニケーションが現実のつきあいを阻害するのではなく、むしろ現実での社会関係を活発に形成・維持している者がオンラインでのコミュニケーションをも積極的に利用していると考えるべきであることを示唆している。
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