研究概要 |
乳幼児期のダウン症児の屈折異常の状態を明らかにするために,0〜5歳のダウン症児141名を対象に,小児用レフラクトメータを用いて屈折度を評価した.屈折異常の頻度は年齢によって差は見られず,約70%と高頻度であった.今回の結果からダウン症児は乳幼児期の段階ですでに屈折異常を多く伴うことが指摘された. また,早期からの眼鏡装用がどの程度可能であり,どのような効果があるかを明らかにするために,眼鏡を早期に装用している子どもの療育担当者および養育者20名を対象に,眼鏡装用に関する4領域33項目からなる質問紙調査を実施した.眼鏡装用に至るまでの期間は,半数以上が2週間以内で装用可能であった.80%以上が1カ月前後で装用が可能となり,65%が「思ったより楽に眼鏡をかけることができた」と答えている.眼鏡装用後に変化が見られたとした項目の各領域における割合は,「個別指導・課題学習場面での変化」で38.2%,「屋外・ホール等の活動での変化」で39.2%,「対人関係・コミュニケーションでの変化」では39.6%であった.すなわち,各領域とも約4割の項目について眼鏡装用後に子どもの行動の変化が見られたことになる.また,具体的にどの様な行動の変化が特に多く見られたかについてみると,「先生や子どものすることを良く見るようになった」が62.5%と最も高い.次いで,「全体に動きが目的的になった」53.3%,「課題場面で落ちつきがでてきた」52.9%,「他の子どもや先生への働きかけや言葉かけが積極的になった」50.0%,「全体に動きが素早くなった」46.2%となっている. これらの結果から,早期の眼鏡装用は子どもの様々な生活や行動面において効果があることが指摘されたと同時に,知的発達に障害をもつからこそ早期からの屈折矯正によって良好な視覚情報を提供することが,子どもの発達を支援する上で重要であることが強調された.
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