研究課題/領域番号 |
08710169
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
教育学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋本 鉱市 東京大学, 大学院・教育学研究科, 助手 (40260509)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1996年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 専門職 / 専門職養成政策 / 政策決定プロセス / 医師 |
研究概要 |
本研究では、戦後日本における医師養成計画とその政策決定プロセスを、「適正数」をめぐる諸アクターの議論を中心として、高等教育全体や世論の中で跡づけるとともに、それを通してわが国の医療専門職をとりまく政治構造を分析した。戦後における医師養成は、一貫性を欠如した恣意的な計画・政策のもとに、絶えず大きく揺れ動いてきたが、それは医学教育と大学病院(研修)を統括する文部省、医師国家試験と医療行為を監督する厚生省の2大官庁、医療を政策課題に掲げる自民党、専門職の権益と地位を保全する日本医師会の4者が様々なヘゲモニ-闘争を繰り広げてきたためである。さらに、辺地医師の養成に関心を寄せる自治省や、「家業継承」のためその再生産機関設置を望む一部の開業医集団などが介入した。しかし、これらの政治アクターに確固たる政策理念があったわけではない。つまり、医師が「不足」か「過剰」かという問題は実態としては判別されにくいにもかかわらず、人口10万人対医師数150人といった「適正数」が政治的なイッシューの範疇において不足と過剰の分水嶺とされ、しかもそれがもっともらしい科学的装いをまとまってどの集団にも共通した一つの数値目標として一人歩きしたのであり、その結果、政策・計画は状況主義的なものにならざるを得なかった。また国民の医療・福祉の充実要求を背景に、医師拡充計画は強引な政治的プロパガンダとしても利用され、一部開業医集団もそれに便乗する形で医大開設を実現した。こうして、文部省が主たる政策主体である高等教育政策全体から見れば医師養成は常に例外的な措置が講じられた、言い換えれば乖離せざるを得なかったのである。またその意味で、わが国の場合、専門職は国家主導の下に計画的に養成されてきたという近代化の「後発効果」の側面を無批判に強調するのは避けるべきであり、職業集団の側の論理(「家業」としての医業)を看過すべきではない。
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