研究課題/領域番号 |
08710182
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
教育学
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
佐藤 哲也 兵庫教育大学, 学校教育学部, 助手 (10273814)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1996年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | アメリカ / 植民地時代 / ピューリタン / ピューリタニズム / 子ども史 / 女性史 / 教育 |
研究概要 |
本研究は、17世紀ニュー・イングランドにおけるピューリタン家族の人間関係について「母親」を中心に再構成することによって、子育てをめぐる夫婦の分業、母子の情緒的繋がりなどを明らかにし、近代初期の親子関係や育児実践のありようについてアプローチしようとするものである。研究を進めるにあたって次の三つのカテゴリーに基づいて資料収集・分析を行った。(1)日記、自叙伝などの内的世界を記した私的資料(2)説教集、家政書、育児書のような公共性が強い、生活規範として機能していた文書資料(3)初婚年齢、出生率、子ども数、死亡率など、ライフサイクルに関わる人口動態学的資料。これらの資料を歴史心理学的手法に基づいて分析することによって、ピューリタン家族に関する以下の問題について検討した。(1)家族観、(2)結婚観、(3)夫婦関係、(4)理想的な家母のイメージ、(5)妊娠・出産に対する心性、(6)乳幼児保育の思想と実践。本研究の結論を要約するならば、以下の通りである。ピューリタン家族における母親は、家長の権威の下にありながら、子どもの養育に関して大きな影響力を有していた。彼女らは、授乳を通じて子どもとの間に密接な情愛関係を結び、子どもの霊的・精神的成長に大きな影響を及ぼした。母親たちは子どものうちに原罪を看取する点でピューリタン的子ども観を踏襲したが、出産という女性固有の経験により、父親(男性)とは異なった子ども理解を示していた。出産の危機に乗り越えて誕生した子どもは、神の祝福であり、母親の救いを確証するものであった。それ故、彼女らは神の賜物である子どもに対して特別な感情を抱くことになる。それは、神の支配と権威を象徴する父親の養育態度とは一線を画するものであり、いわば神の慈しみと愛とを顕現したものであった。母親のイメージは、子ども期の原体験として、ピューリタニズムにも投影され、神や福音が母親のメタファーで語られるようになるのである。
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