本研究は、次の4段階を踏まえて行われた。(1)先行研究・基礎文献の収集および検討、(2)仮説の定立、(3)仮説の検証、(4)研究成果の提示。 (1)では、「啓示信仰」に関わる基礎文献として、特にプロテスタント神学関連の文献を中心に収集した。目標の約8割を入手できた。残り約2割は、次年度以降そろえることにする。 (2)では、当初、「哲学的信仰」の特徴である「交わり」の概念の意義を強調し、「啓示信仰」のもつ絶対的啓示の排他性を克服する試みを仮説として掲げた。これは、ヤスパース哲学からのプロテスタント神学批判を意図したものであった。 (3)において、(2)で掲げた仮説が含まねばならない対象の広さが明らかにされ、その結果、哲学からの神学批判という議論の枠組みの見直しが図られた。そこで、議論の中心をイエスの人格性に関する問題に限定し、「哲学的信仰」における「暗号」と「啓示信仰」の絶対的啓示という立場の違いに注目した。特に、イエスを人間と神の両面から分析する際の論点を洗いだした。 (4)では、「交わり」、「人格性」、そして「暗号」に関する考察を以下の論文にまとめた。「交わりの超越的契機」(平安女子学院短期大学紀要No.27 1997年3月)、「超越者の連関における人格性の意義」(平安女学院短期大学教育研究所年報No.4 1997年3月)、「暗号としてのイエスに関する一考察」(キリスト教教育論集No.5 1997年5月予定)。
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