1:調査 (1)製塩用具の調査 揚げ浜式製塩用具30点、入り浜式製塩用具21点、合計51点を調査した。その結果、塩分が原因と考えられる劣化を起こしている資料が18点観察された。これらの資料の使用歴を見てみると、塩水を汲み入れる桶類や、塩分濃度の高い塩水にさらされる灌水用具が中心となっている。 (2)醤油醸造用具の調査 210点の醤油醸造用具を調査した。その結果、82点の資料に塩分が原因と考えられる劣化を起こしている資料が観察された。その内訳は製塩用具と同様に、塩分濃度の高い塩水にさらされる場所で使用される道具が中心となっている。 2:実験 (1)X線透過試験 塩分が原因と考えられる資料の保存処理を行う際、処理前、処理後にX線透過試験を行った。その結果、処理前に塩分と思われる付着物が観察されたが、脱塩処理後には除去されていることが観察された。 (2)サンプル材による劣化試験 タケ、スギ、ヒノキ、サワラでそれぞれブロック状のサンプル材と薄片のサンプル材を作成し、純水と飽和食塩水への浸け込みと乾燥を繰り返す劣化促進試験を行っている。その結果、まだ変化は観察されていないが、製塩用具や醤油醸造用具の桶などの寿命が約10年ということなので引き続き観察が必要と考えられる。 3:結果 今回の調査、実験では塩分による木部の劣化はあると考えられる。従って、木部の脱塩処理は必要と思われるが、木部を脱塩処理する場合かなりの処理期間がかかってくる。それによって、破損や変形・収縮といった事故の危険性もでてくる。このような事故を防ぐことを念頭に処理を進めていく必要がある。
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