研究課題/領域番号 |
08710244
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
東洋史
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研究機関 | 広島女子大学 |
研究代表者 |
松重 充浩 広島女子大学, 国際文化学部, 助教授 (00275380)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1996年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 中国東北地域史 / 近現代史 / 在地有力者 / 国民国家建設 / 中華的文明 / 王永江 / 条約システム / 張作霖 |
研究概要 |
本研究では、20世紀初頭の張作霖地方政権下(1916〜28年)における中国東北地域政治の特徴を、在地有力者層の一員であり、同地方政権の中心的行政官だった王永江(1872〜1927年)の内外認識および統治理念の分析を通じて追究した。その概略は、以下の通り。 王永江は、当該期中国を、所謂「条約システム」下で「商戦」に巻き込まれ、伝統的諸規範=〈中華〉文明的諸規範の解体に瀕していると認識していた。この内外認識の下、王永江は、「商戦」状況に打ち勝ち、〈中華〉文明的諸規範の回復を目指した諸施策を推進した。具体的には、東北地域における広義のインフラ整備諸施策を、倫理的に自立した高い事務的処理能力を持つ為政者が指導する官治強化と、中央政府からの相対的自立と対外的癒着を通じて推進したのである。それは、結果として、東北地域が中華民国による国民国家建設とリンクする上での諸環境整備という方向性を持っていた。 しかし、王永江の〈中華〉文明的諸規範回復という統治理念は、王永江自身も承認せざるを得なかった「条約システム」的世界の優越性という現実を如何に克服していくのか=「条約システム」的世界の中で〈中華〉文明的諸規範に基軸を置く国家建設を如何に達成していくのかに関する、具体的な理路を提示できないという問題点を持つものだった。このため、王永江の諸施策は「地域主義」の埒内にあり、その施策を柱とした張作霖地方政権もまた、全国的政権としての具体的有効策を提示できず、中央政界進出後、急速に崩壊していくこととなる。王永江統治理念の上述問題点の克服は、張学良政権(1929〜31年)における主要政治課題として持ち越されるのである。
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