最初に、前年度までに調査したマヤ南部地域の石彫資料を整理した。グァテマラ高地から太平洋岸斜面出土の石彫資料はその大半を現地で写真や観察データをとり調査した。今年度は、コンピューターを購入し、出土した遺跡、所属機関、所属機関の登録番号、大きさ(高さ、幅、奥ゆき)などを入力した。同様にして今年度行った石彫調査で得られた資料も同時に整理をした。 現地で撮影した石彫のネガより図化器で作業するために必要な大きさの写真を用意した。今年度は、この写真を基にして後古典期と考えられる石彫の一部の正面、側面図を作成し、必要に応じて背面等も図化した。また、グァテマラでの石彫細部の観察記録を活用し、より正確な石彫の図を作成することに努めた。 一方、石彫の比較研究に必要な文献を、国内の研究機関において収集した。これらの文献より、現地調査においては得られなかった石彫の出土地などの考古学的な情報を収集し、石彫の図面とともにマヤ南部地域の石彫編年に役立てる。 こうして得られた石彫の図を資料として、メソアメリカや中米の他地域出土石彫と比較をした。メキシコ中央高原などの影響をマヤ南部出土の後古典期の石彫に観察できた。しかし、石彫の器形や様式をみるとマヤ南部古典期後期の石彫りとの類似点が多い。この点を考慮すると、マヤ南部全域の石彫文化の変遷とその内容を明らかにするとともに、他地域の石彫文化との関係を解明する必要があることが明確になった。
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