弥生時代中期末〜後期末の鍛冶遺構(鉄器製作址)出土遺物をもとに鍛冶具を復元し、実際に弥生時代の鉄器を製作した。施設・道具で有機質のため残存しなかったと思われる送風機(ふいご)、鉄鉗については古文献、絵図、民族誌資料を援用し復元した。その実験の工程は概ね次のようであった。 1.鍛冶に供する鉄塊をつくるため原始的な炉を築き製鉄。 2.発掘資料に基づき鍛冶炉および鍛冶具を製作。送風機は牛皮(皮ふいご)を製作・使用した。 3.鍛冶師白鷹幸伯氏の指導下、鍛冶復元実験を実施。 その結果も次の各点が判明した。 a.鍛冶の際の石製槌、鏨、金床等の使用の仕方。 b.鉄板の端切れ、鍛造剥片の飛散状況ならびに工人、道具との位置関係。 c.鍛冶炉の被熱状況(温度および焼け方) これらは実際の鍛冶遺構における発掘資料の分析について大きく寄与するものと思われる。 なお、課題もいくつか生じたが、これは鉄素材の質そのものに関わる問題である。これについては新日鐵・TAC分析センターにおいて製作物を冶金分析しており、その結果を併せて整理する予定である。
|