未入力資料の本文を機械可読化し、平安和文資料の機械可読データの整備を行った。これを基礎資料として、敬語動詞の用例を抜き出し、あわせて意味的に対応する文法的敬語形式(動詞+補助動詞)の用例を抜き出した。 この二程の用例データについて、「話し手」「聞き手」「動作主体」「動作対象」などの文脈情報を付加し、平安和文語の敬語表現のデータベースを作成した。 特に、会話文における敬語運用について分析を行い、その結果、従来絶対敬語的とされた当時の敬語運用が、相当に相対敬語的であることを導き出した。その運用尺度として、「主-従」「親-孫」「男-女」の社会的な要因を推論していたが、未知の要因の存在も想定でき、「貴族的-非貴族的」といった文化的な美的基準の関与を認めるところとなった。特に、それが語彙的敬語の生成と密接な関係にあることが明らかとなった。
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