研究課題/領域番号 |
08710291
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
国文学
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坪井 秀人 名古屋大学, 情報文化学部, 助教授 (90197757)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1996年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 近代詩 / 朗読 / エクリチュール / メディア / 労働運動 / 戦争 / 民衆芸術論 |
研究概要 |
以前より近代詩と朗読との関係については予備的な考察をすすめてきたが、今回の研究では1920年代から50年代というように、ある程度範囲を区切って、なおかつ包括的にその実態の検証と、文学史的な評価、位置づけを与えることにつとめた。幸いにも、本研究によって情報の収集や研究論文の発表など、多くの成果を得ることが出来た。 まず何よりも、範囲を区切ったとはいえ、大正期から戦後までの近代詩史における音声への関心と書記(エクリチュール)の意識との相関性を、かなり大きな視野で系統づけることが出来た。これは従来の作者/作品中心の記述による文学史とは全く異なった表現史的な詩史を構築していく一つの段階を作りえたものと自負している。 各論的には、大正期に詩檀を形成したいわゆる民衆詩派がきわめて積極的に朗読運動を推進したことを再発見し、あらたな評価をそこに与えることが出来た。大正期の近代詩はともすれば民衆詩を史的な事項の中だけで評価しがちだが、これはそれを改める契機にもなろう。また、20年代から30年代にかけてのモダニズムと音声/書記との関わりを分析し、日本におけるモダニズム芸術の特質を、その分析から抽出することが出来た。この研究はモダニズム詩をブロレタリア詩や当時萌芽をみた勤労詩、そして戦時期の戦争詩へとリンクさせることにも意を注いだ。特に戦争詩とモダニズム、朗読運動との関係については従来の私自身の研究をも十分に補訂しえたと考えている。その他、戦後の勤労時運動、あるいは『荒地』『列島』などの戦時詩の中心的な動向と、以下の戦前戦中の近代詩の問題との連続性/不連続性についても研究を発展させることができた。 未知の研究領域でもあるため大量の文献を必要とし、また聞き取り調査なども数度にわたって行った。これらにより充実した成果を得たと自負している。本研究をさらに今後の研究計画にいかしていきたい所存である。
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