研究課題/領域番号 |
08710327
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
英語・英米文学
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
久野 陽一 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (40242888)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1996年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 18世紀イギリス小説 / サミュエル・リチャードソン / ジェイン・オースティン |
研究概要 |
本研究費補助金交付期間内における研究の目的は、イギリス初期小説の歴史的背景を明らかにすることにあった。それは、近代西洋社会の国際化と再編成のなかにあって小説の果たした役割を問うことでもある。そこで、今年度交付期間内においては、テストケースとしてサミュエル・リチャードソンの「サ-・チャールズ・グランディソン」を主な研究対象とした。この小説は、今日ではそれほど読まれないものではあるが、出版当時はリチャードソンのその他の小説と同様に広く読まれ、後の世代に大きな影響を与えた。この点で、この小説には18世紀中頃のイギリスの中産階級を中心とする大衆の抱いていた意識をそのまま歴史的に反映していると考えられるからである。特に今年度の研究においては、この小説のなかでそれまでヨーロッパの文化的先進国であったイタリアが、イギリスの価値観を代表する国際人である主人公らの言説においてどのように表象されているのかを分析することによって、ヨーロッパにおける文化的主導権の交代という主題がこの小説の構造をいかに支えているのかを検討した。この点に関する研究の成果は論文「他者と試練…「サ-・チャールズ・グランディソン」のイタリア」(「外国語研究」33)にまとめた。それに際して同時代の歴史的資料は、京都大学附属図書館および関西大学図書館が所蔵するマイクロフィルムのコレクション“The Eighteenth Century"、東京大学附属図書館等が所蔵する近代初期以降英国で出版された雑誌のマイクロフィルムのコレクション“The Early English Periodicals Collection"を閲覧することによって確認することができた。また、この小説が提唱する価値観は後の代表的作家たちにも継承された。「幸福な退屈-オースティンの「サ-・チャールズ・グランディソン」」(「イギリス小説ノート」10)では、ジェイン・オースティンによるパロディを例にしてこの小説の受容の問題を論じた。
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