今回の科学研究費補助金による研究では、「復活」という聖書における最重要概念にかかわる語彙として、特にラテン語vivificoの訳語としての古英語geliffacstan(ともに「生かす」の意)を調査対象に選んだ。 geliffactan(vivifico)は地上的・肉体的生命について「生かす」という意味と、また霊的な永遠の生命について「生かす」の意味の両方で用いられる。またこの語は死者について「復活させる、蘇らせる」の意味で現れることがある。古英語訳ヨハネ伝5章21節(父が死者を復活させて命を与えるように)におけるgeliffaetanは「復活させる」の言い換えとして現れており、T.N.TollerによるAn Anglo-Saxon Dictionary : Supplementは、この例が「肉体的生命について」用いられたものであるとしている。だがここで注意すべきなのは、geliffaetanが「復活させる」の意味である場合も、肉体的生命と霊的生命のどちらについても使われる得るという点である。上記ヨハネ伝の箇所においてgeliffaetanは、肉体的生命を復活させることをのみ意味しているのではなく、霊的生命を蘇らせることをも表していると解釈でき、よってTollerの辞書におけるこの用例についての記載は不適切であると言える。以上の研究成果は、『愛知県立大学文学部論集(英文学科編』第45号(近日発行予定)に掲載予定である。 補助金の交付を受けることにより、通常の研究費では購入が困難である、多数の高価な書籍を入手できた。さらに東京都立大学英文学専攻図書室等で、個人ではもはや入手不可能な多数の書籍を借り出し、複写製本することができた。研究代表者は今後とも古英語におけるさまざまな聖書的な表現をラテン語等の原典テキストにも注意を向けつつ調べて行く所存であるが、これらの資料はそのさい十分役に立ってくれるはずである。
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