アフロアジア語族のクシ語派に属するオロモ語は、正書法が確立していない。とりわけ重子音の文字表記に関して問題がある。本研究は音声分析装置(CSL)を使って、重子音の持続時間を調べ、同時に重子音に先行する母音の長さとの相関関係があるかどうかを確かめた。 ところでオモロ語は音節構造上の制約から3子音連続は許されないので、二番目の子音と三番目の子音の間に母音/i/が挿入される。このことより重子音が弁別的であることの十分条件を満たしている。 結果は以下の通りである。 持続時間の点では重子音と単子音の間に有意差が認められる。但し先行する母音が短母音の場合には、重子音と単子音の弁別が比較的容易であるのに対して、長母音の場合には、次のような傾向があることが窺知された。つまり単子音に先行する長母音は長く、一方重子音に先行する長母音の持続時間は短くなる傾向が見られる。さらに単子音と重子音が弁別的である日本語と比較した場合、オロモ語は持続時間の点で日本語の判断境界より短くても重子音として解釈されていることがわかった。 つまり調音レベルでは弁別的であるけれども、聴覚レベルではその弁別が難しい場合が多く、その結果文字表記にばらつきが出ていることがわかった。現在収録した単語の分節レベルでの文字表記を進めている段階である。なおアクセントとの関係については現時点では不明で、今後の課題である。
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