研究概要 |
異なるリズム型を持つと考えられる言語の構造的側面について注目してみると、音節構造をその区別に寄与する要因の1つとする考え方がある。こ観点から今年度は中国語の音節構造と音節長に重きをおいて、基礎的なデータの収集を行った。中国語は(C)V(C_1)(C=子音,V=母音,C_1=n/ng)という音節構造を持つ。音節頭音となる子音(C)には子音連続(consonant cluster)は存在せず、尾音となる子音(C_1)は-n/-ngに限られる。音節はCVを基本とし、音節数も411と少ない。これを例えばstress-timed languageといわれる英語と比較してみると、音節の基本形がCVC、音節数は約3000という特徴とはかなり対照的である。ここでは中国語のリズム型の分類に関係すると思われる音節についてまずそのdurationの測定から始めることとし、単独発話による音節長を整理した。北京語話者の男性の第1声による発話について、Sound Scopeによって分析したところ次のような傾向が観察された。平均長は574.5〜1123.3(msec)で、音節内の構成要素が増えるに従って平均長がのびていることがわかった。例えば、二重母音を持つ音節の平均長と単母音を持つ音節の平均長の差は145.8(msec)、三重母音を持つ音節の平均長と二重母音を持つ音節の平均長の差は129.9(msec)であった。しかしこの分析は、単独発話というモードを使用したため、1音節の自然な音節長を表すものではなくあくまでも予備的な観察に終わってしまった。現在キャリアセンテンス内の音節長について分析中で、その後は中国語の中で多数を占める二音節語の分析を進めたい。そして、音節という単位がより高次なリズム構造の中でどのような働きをするかを明らかにすることを目標としたい。
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