今年度は、まずはじめに、ドイツ民法の離婚給付規定につきその基礎となる考え方を検討し、整理した。特に、ドイツにおける離婚後扶養については、その規定の制定過程及び判例の検討から、第一にドイツにおいては、大まかな傾向として、離婚原因において有責主義から破綻主義に近づくにつれて、離婚後扶養の要件が緩和されてきたという点を確認し、第二に離婚原因と離婚後扶養が同じように有責主義から破綻主義に移行するとはいえない点を指摘した。この第二の点は、離婚原因に破綻主義が導入されても、離婚後扶養について破綻主義を貫徹することが非常に困難であるということを意味する。この点は、現在日本において進められている、民法改正作業に非常に示唆的ではないかと考えられる。 次に、日本において婚姻の効果(夫婦財産制を含む)および家庭の財産についてそもそもどのように考えられてきたのかについて、日本民法の規定の制定過程を検討した。その結果、まず第一に、妻の家事労働について、立法および改正の過程で考察されることが余りにも少なかった、という点を確認し、第二に、離婚の際の財産分与と、配偶者相続分の問題に関する立法の際、妻の保護が考えられていたのと同時に、夫の財産とされている財産が多くは家の財産であり、家族の財産をいかに取り扱うかということが考慮されているという点についても明らかにすることができた。 さらに、以上の検討と、以前に行った、ドイツ民法における配偶者の協力義務と夫婦財産の清算に関する研究の成果をふまえ、1996年10月に行われた日本私法学会において研究報告を行った。 しかしながら、以上で検討が終了したわけではない。今後に残された課題としては、日独の契約法規定についての検討が未だ手つかずに残されている。
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