研究課題/領域番号 |
08720038
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
民事法学
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
出口 雅久 立命館大学, 法学部, 助教授 (70237022)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1996年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | ドイツ倒産法 / 市場適合性 / 財産志向性 / 債務者自治の強化 / 差し迫った支払不能 / 残債務免責手続 / 公正な配当 / 否認権の強化 |
研究概要 |
今回の日・独・英倒産法比較研究においては、まず、研究対象として未開拓のイギリス倒産法の現状把握のため、1996年8月にオックスフォード大学アドリアン・ツッカーマン教授を訪問し、イギリス倒産法の全体構造についてご教示を受け、イギリス倒産法に関する基礎資料を収集した。その後は、時間の制約から、わが国における破産法の母法となっているドイツ倒産法に焦点を絞って基礎的な文献資料を収集し、1994年に成立した新ドイツ倒産法の概要について把握することに努めた。具体的には、1996年9月にドイツ・ドレンデン工科大学法学部よりボルフガング・リュケ教授を招聘し、新ドイツ倒産法に関する集中セミナーを関西民事訴訟法研究会において開催した。新ドイツ倒産法の特色は、倒産手続の市場適合性の実現にある。この市場適合性の意味することは、まず手続の財産志向性であり、市場の力に抗して企業の存続を図ることは改正の目的ではない。そのために新ドイツ倒産法が採用したのが債権者自治の強化による手続の強化である。この脱規則化によって最良の換価方法を追求することができる。この際、破産管財人の権限の拡大として否認権が強化されている。さらに、物的担保を有する債権者を統括することでより一層この市場適合性は実現される。もう一つ改正の目的は、財団不足のために倒産手続が簡易・適時に開始できるように差し迫った支払不能という開始原因が導入された。これに加えて、破産優先権を廃止することによって公正な配当を目指しているし、また、誠実な債務者に対しては、アメリカ法の残債務免責手続を導入している。 今回の比較研究においては、新ドイツ倒産手続の概要を明らかにすることができた。しかし、ドイツ倒産手続開始の効果、すなわち、差押、倒産債務者の地位、相殺、不確定法律行為の効果、さらには、否認権、取戻権、別除権等に関しては、ドイツ倒産実体法とのより詳細な比較分析が不可欠であり、今後の課題とされる。また、今回の研究において残念ながら分析ができなかったイギリス倒産法に関しても来年度以降継続して研究したいと考えている。
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