1.独占的競争の国際貿易モデルにおける需要面について検討するため、関連文献のサーベイを行った。そこでは、代表的アプローチである、"Love of Varietyアプローチ"と"Ideal Characteristicアプローチ"を比較すると同時に、両アプローチの統合の必要性についても検討した。その結果、両アプローチの定式化は大きく異なるが、貿易モデルを構築した際に得られる貿易パターンについての結論は、どちらのアプローチでもほぼ同じであることが明らかになった。そして、両アプローチを統合する新たなアプローチを開発するよりは、多少の現実妥当性を犠牲にしても、モデルの扱いが簡単になる"Love of Varietyアプローチ"を採用するのが相対的に望ましいという暫定的な結論を得た。ここからさらに発展させた「測度論的アプローチの適用可能性」については、現在研究が進行中である。 2.一方、独占的競争国際貿易モデルの供給面については、「(製品)バラエティについての収穫逓減・収穫一定・収穫逓増」といった概念を用いたモデルの分類・開発が有益となることが明らかとなった。この概念に基づけば、従来からの独占的競争国際貿易モデルは「バラエティについての収穫一定」の側面を強調したものと言うことができる。また、最近盛んになっている「通信ネットワークと貿易」あるいは「商社ネットワークと貿易」といったような問題について理解を深めるためには、「ネットワーク外部性」を貿易モデルに取り込む必要が生じてくるが、そうした際には「バラエティについての収穫逓贈」という概念を導入したモデルの構築が不可欠となることも明らかになった。現時点では、こうした貿易モデルの開発はまだ手薄であり、「輸送費用とネットワーク外部性を導入した貿易モデル」の構築を目指して現在研究が進行中である。
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