本研究では、まず既存の環境統計体系のうち、国連が発表した環境経済統合計算(SEEA)、アメリカ商務省が発表したIEEA、日本の経済企画庁が発表したグリーンGNP等々を比較し、それぞれの特徴を考察した。SEEAが包括的に環境と経済との関係を表示することを目指しており、そのため現実に実現することがきわめて困難になってしまっているのに対し、IEEAやグリーンGNPは、SEEAを念頭に置きながらも、実現不可能な部分に対してはかなり大胆な割り切りを行い、それによって一応の数値を算出することに成功している。ただし、その割り切りのため、算出された結果の利用に関しては、かなり限定的で慎重な態度が要求される。本研究の成果として、それぞれの環境経済統合計算システムの特性と、その特性に応じた利用の可能性に関する論文を作成し、統計学誌に投稿する予定である。 また、本研究ではこのように集められた環境統計データを公開し、利用する方法についても検討した。特に、最近急激に発展しつつあるWWWを利用した情報公開の方向を考え、まず日本の環境関連法令、過去の裁判の記録、各地の環境運動団体の提供するWWWのサーベイデータ等を収集して、簡易な検索機能を付けて公開した。ただし、本研究の主要対象である環境データに関しては、大気・水質等の観測値の場合その量が膨大にのぼるため一定の要約を行ってから表示することが必要だが、残念ながら効率的かつ実際的な要約・表示方式の開発を完成することはできず、公開には至っていない。環境アセスメント制度が成立する見込みとなり、環境情報を一部の専門家だけではなく誰でも利用できるようにすることが必要なので、この点の研究を続けて行う必要がある。
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