女子は、就業と非就業の間を行き来するだけでなく、働き方も日本では、正社員、パート、家族従業、内職、自営業などがあり、かつ就業形態間の移動が多い。雇用職業総合研究所「女子の職業経歴と移動調査(1983)」を用いて、職業移動に関して分析をすすめた結果、若いコホートほど就業行動が子供の年齢に依存するものとなっていることがわかる。中高齢層は自営業者比率も高いこともあり、育児期の就業率の落ち込みが少なく、女子は就業定着者と無業者に別れる傾向があったが、若い年齢層では、若年時の就業水準が格段に高く、正社員・事務職就業者比率が高いが、育児期の離職行動が顕著であり、その後はパートとして再参入する傾向が増加している。未婚時の事務職者が育児後には販売、技能などのパート就業者として現れることが多い。このような職種と就業形態の非連続性は中年期の女性の低賃金に寄与している。 教育年数が就業行動に及ぼす影響について、日本では諸外国と比べ就業率と学歴の影響が女性では弱く負の関係さえあることが指摘されてきたが、本データでも同様であり、学歴は、正社員(従業上の地位)選択は高めるが、就業率に関しては、賃金率の上昇を通じた正の効果はわずかで、むしろ夫の所得増大(と夫の自営業比率の低下)を通じて間接的な負の効果を及ぼしている。 学歴水準以上に就業形態(正社員か、パートか、内職者か等)が稼得所得に大きい影響を及ぼす。正社員の相対賃金は高いが、他の就業形態は低賃金である。就業形態の選択には、家族状況が大きい影響を及ぼすが、履歴データを見ると、需要面の変化(農業部門の縮小、製造業の拡大、サービス化)がもう一つの大きい要因である。
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