研究概要 |
男女比較を可能とするために、男性を分析対象としたOmori(Economic Inquiry,in press)と同一の抽出条件をNational Longitudinal Survey Youth 1979-1987データに課し、女性のみを抽出したところ、2,605人の女性が経験した11,113のnonemploymentのスペルから成るサンプルが得られた.再就職のハザード式をセミ・パラメトリック最大尤度法により推定し、仮説の検定をした.過去のnonemploymentとemployment duration、時間を追って変化し得る個人の属性や、経済環境などを説明変数とし、観察不可能な個人の属性の影響や、その説明変数との相関関係をも考慮した.また、過去のnonemploymentとemployment durationsの効果は、地域失業率、nonemploymentの理由、子供の数など、過去のnonemploymentとemployment経験時点での環境によって異なり得る定式化をした.その結果、過去のemployment durationは、再就職のハザードに対して正の効果を持つこと、また、その効果は、過去のemployment経験時点での子供の数と共に大きくなることが明らかになった.前者は、過去のemployment中の人的資本成長、あるいは、過去のemploymentの持つ(負の)汚名効果のどちらによっても説明可能であるが、後者は、(負の)汚名効果によってのみ説明可能である.すなわち、過去に育児というハンディキャップを負いながらも働いた女性は、それにより潜在的な雇用主から評価(負の汚名)を得るので、後にnonemploymentを経験した場合、他の女性よりも容易に再就職できるものと見られる.また、nonemploymentの再就職ハザードに対する負の効果は、個人の属性の効果をコントロールした後では、消滅することが明らかになった.これらの発見は、労働市場が自ずから「女性に理解のある」情報処理機能を有する可能性を示唆すると同時に、出産・育児後の女性の再就職を援助する政策の必要性に疑問を投げかけるものである.
|