研究課題/領域番号 |
08730044
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
経済史
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
谷本 雅之 東北大学, 経済学部, 助教授 (10197535)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1996年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 近代日本 / 世帯経済 / 労働供給 / 小農 / 女性史 / 副業 / 在来産業 / 織物業 |
研究概要 |
本研究では、幕末から大正期にいたる織物業史の事例研究(埼玉県入間郡等)を行い、(1)織元の経営史料の分析から、賃織への発注と工賃支払いが、強い季節性をもち相互に逆相関の関係にあったことがあきらかとなり、次いで、(2)農家経済調査の検討から、それは、農家内の世帯構成員間の労働力配分の問題に依存していることが示された。これらの事実発見により、以下の点が世帯経済における小農、女性、副業の関連の特色として指摘される。すなわち、農家世帯は、その世帯の維持、存続のために、与えられた経営面積を短期的には所与の世帯構成人員との関係の下で処理することが求められている。しかし、必要農業労働量と世帯構成員との不整合は、世帯内に燃焼度の低い労働力を発生させるが、その度合いは、必ずしも放出可能な一人分の労働力に一致するとは限らない。また季節的な労働需要の変動も、恒常的な過剰労働力の発生には制約となるし、家事労働にみられるような非定型の世帯内労働需要の存在もそれを定型的、定量的な労働需要に振り向けることを、ロスの大きいものにしている。このような制約下にあって、世帯内にも労働需要を調整しているのが、特に女子による世帯内でも“多就業"であった。「副業」は、その就業形態の特色-労働力支出の空間的、時間的な拘束の弱さからくる可変性-から、この“多就業"が必然化せざるをえない労働力に適合的なものであったと考えられる。農家世帯は「副業」を、その固有の就業形態故にその就業構造の中に組込んでいたのであり、そのことによって、農家世帯は、より効率的な世帯内労働力の配分と動員を計っていた。農家世帯は自身の再生産「戦略」の一環として副業を就業構造に組み込んでいたと考えられるのである。
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