研究課題/領域番号 |
08730045
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
経済史
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
中村 尚史 埼玉大学, 経済学部, 助教授 (60262086)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1996年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 鉄道業 / 鉄道政策 / 近代日本 / 経営組織 / 技術者 / 鉄道局 / 官営鉄道 / 民営鉄道 |
研究概要 |
本研究の課題は、1870-1900年代における日本鉄道業の形成・展開過程を、その事業展開と鉄道政策との相互関係に注目しながら明らかにすることにあった。そこで筆者は、従来の鉄道史研究への批判をこめて、(1)「鉄道業史」研究の再構築、(2)技術形成論や経営史の分析方法の導入(新たな研究方法の導入)、(3)鉄道業の展開と政策形成の相互関係の検討という三つの視角を設定し、研究をすすめた。 まず創業(1872年)から日清戦前(1894年)までの鉄道業形成期については、官営鉄道と日本鉄道会社、九州鉄道会社の比較事例研究を軸に、鉄道業と鉄道政策の変遷との相互関係を検討した。その結果、(1)官営鉄道の企業的行動の背景と意義、(2)官営鉄道における技術形成の過程とその意義、(3)政府の財政逼迫と海運中心の交通政策の影響、(4)鉄道政策の事業構想面での柔軟性とその影響、(5)鉄道官僚と鉄道敷設法制定との関係、(6)鉄道敷設法制定による官営鉄道の経営負担増加と営利企業的な側面の後退、(7)鉄道敷設法にく民営鉄道の間接的な「保護」といった諸点が明らかになった(拙稿「日本鉄道業の形成と鉄道政策」参照)。一方、日清戦後以降の鉄道業の展開については、筑豊地域における鉄道企業と石炭輸送との関係解明を事例として、鉄道国有化の背景と意義に関する一考察を試みた。日清戦争以降、筑豊炭鉱業は急速な発展をはじめるが、それに伴う恒常的な輸送需要の増大をにらみ、筑豊の鉄道企業は大幅な輸送力増強のための設備投資をはじめる。しかし高配当を望む多くの株主の存在が、その設備投資を阻害し、さらに高運賃政策を余儀なくさせることによって、筑豊炭鉱業発展の桎梏となった。このような状況を打開するきっかけとなったのが、鉄道国有化(1907年)であり、実際に筑豊炭鉱業は輸送力増強、運賃逓減の両面で、その恩恵を受けたのである(同「炭鉱業の発達と鉄道企業」近刊予定)。
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