この研究はまだ継続中であるが、平成8年度においては以下のようなことを行った。 1。データの収集:研究補助員により、主として「大蔵省銀行総覧」より銀行の本支店の創立と消滅について影響を及ぼしたと思われる事象について、明治から戦前までの東京の銀行の本・支店の変遷や人口の変遷などについてのデータを収集し、データベース化した。 2。分析:イヴェントヒストリーという統計的手法を用いて分析を行っている。Greve-Strang-Tuma(1995)で開発した多変数ハザードレートモデルの実践ともなっている。これまでにわかったことを後述の論文にて日本経営研究学会で報告した。また平成9年度に行われる2つの学会に応募中である。 3。これまでの分析結果:企業の発生率は、はじめ模倣により高くなりしだいに競争によって低くなることがわかっている。この研究ではさらに地理的位置の効果が加えられた。具体的には東京の区や郡といった大きさの地域でのローカルな競争の効果と、日本全体の銀行業の推移が東京に及ぼす効果の両方が検証された。本店のみの小さな銀行どうしの激しい競争の様子や、こうした1店舗銀行の存在が他銀行の同じ地域の支店には大きな影響を持つが、逆の効果はあまりないことなどがわかった。 これらの結果は私がアメリカのデータで行った研究の結果とも一致している。後述の論文でとりあえず現在の結果を発表したが、さらに分析を進め、近いうちには外国の一流雑誌に投稿できるまでにもっていきたい。
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