今年度の研究は、次の2つの問題を主な研究対象とした。 1)代数曲面上の正規交差因子を固定したとき、その因子を判別因子として持つような2次曲線束の変形は、いかにして記述され、いかにして計算されるか?それを、曲面とその上の因子の対のなす幾何学によって記述することができるか? 2)代数曲面内で因子を変動させた時、それに伴って、2次曲線束の変形であって、その判別因子が、与えられた因子の変動と一致するように変動するものが存在するか?あるいは、そのような変形が存在するための必要十分条件、あるいは必要条件、十分条件は何か?それを曲面とその上の因子の対の言葉によって記述せよ。 以上の問題に対して、無限小変形の考察により、次のような結果が得られた。 判別因子が非特異な時、因子の無限小変位は、因子の法線束のコホモロジーにより記述できるが、それに対して、標準的な写像により、別の、ある種のコホモロジーの元が対応づけられる。より具体的に言えば、2次曲線束の相対的接バンドルの順像は、階数3の局所自由層になるが、その2次のコホモロジーの元が対応づけられる。その元が零になることが、因子の変位に対してそれを判別因子の変位として実現するような2次曲線束の変形が存在するための必要条件になる。 この結果は途中結果であり、今後のさらなる研究を要する。とくに相対的接バンドルの順像のコホモロジーがいつ消滅するか、という研究を要する。
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